環境管理






環境管理委員会では、環境法令の遵守をはじめ環境保全、地球温暖化対策等の取り組みとそれに係る管理体制のレベル向上を図っています。開発、製造、物流、使用、最終消費、廃棄に至る製品の全ライフサイクルにわたり、環境への影響を可能な限り低減するための努力を重ね、持続可能な社会実現へ向けたチャレンジを続けています。
環境保全
(1)環境負荷の状況
生産活動に係る投入と排出の実績
2021年度は、前年度に引き続き主力のエチレンプラントの大型定期整備を実施したため、総エネルギー投入量、総物質投入量は2020年度とほぼ同等となりました。水資源投入量については、海水を冷却水に利用する誘導品プラントの定期整備がなかったため非定期整備年並みの数量となっています。
千葉工場・研究所および四日市工場では、行政と協定※を締結し、法律より厳しい環境基準を遵守しています。また、環境マネジメントシステムの効果的な運用、省資源・省エネルギー、廃棄物の再資源化などを通じて、今後も環境負荷低減の努力を継続していきます。
※協定とは、千葉工場・研究所は千葉県および市原市と締結している「環境の保全に関する協定」、四日市工場は四日市市と締結している「公害防止協定」をいいます。(ほかの項目の協定も同様)

(2)地球温暖化防止への取り組み
エネルギー原単位の低減を目標
当社では、エネルギー管理委員会を定期的に開催し、エネルギー使用状況の把握、省エネルギー活動の推進に努めています。また、省エネ法に基づき、「5年平均で年1%以上のエネルギー原単位低減」を目標に設定しています。
2021年度は前年度に引き続き第4エチレン製造装置系の定期整備年であったことによる生産量低下や装置の不具合による非効率な運転を余儀なくされたため、エネルギー原単位は大幅に悪化しました。
2022年度以降は安定操業に努めるとともに、省エネルギー活動にも取り組んでいきます。
【エネルギー原単位(千葉工場+四日市工場)の推移(省エネ法定期報告値)】
(1990年度および前年度を100とした場合の指数)

*総エネルギー使用量(KL 原油換算)を、製品数量(t エチレン換算)で割った数値を原単位とし、1990年度および前年度と比較しています。
省エネルギー事例の紹介

第4エチレン製造装置
熱回収の強化によるエネルギー効率化
千葉工場のエチレン製造装置では、ナフサ分解で得られる高温の分解ガスを急冷しています。この時に発生する熱の有効利用のため装置内の様々な箇所で熱回収を行っています。第4エチレン製造装置では、従来の運転条件を見直すことで、ボイラー給水への熱回収を強化する改善を行いました。これにより、従来よりも効率的な運転を行うことができ、約1,300KL/年(原油換算)のエネルギー使用量削減を達成しています。
エネルギー起源CO2排出量2,210千t
「地球温暖化対策の推進に関する法律(温対法)」に基づき、当社の事業活動により排出される温室効果ガスの量を定期的に報告しています。当社では、温室効果ガスのうち製品の製造時に発生するCO2が2,210千tと大部分を占めており、事業活動全般における省エネルギーを推進するとともに、エネルギー管理委員会を定期的に実施し、エネルギー使用状況の把握をしています。また、製品の輸送に係るCO2についても法律に基づき算出し、報告しています。
【エネルギーの使用に伴う二酸化炭素排出量】
【製品の輸送に関わる二酸化炭素排出量】
非エネルギー起源CO2とその他の温室効果ガス
エネルギー起源CO2以外の温室効果ガスとしては、非エネルギー起源のCO2が3,000トンを超える排出となり、温対法上の報告を行なっています。
このうち99%以上はエチレンの生産に伴う排出量(生産量に所定の係数を乗算)であり、エチレン生産量に比例して推移しています。
その他の温室効果ガスについては、3,000t-CO2未満となっています。
【温対法報告値(エネルギー起源CO2を除く)】

(3)大気汚染防止
ばい煙濃度、排出量は規制値、計画値以下で推移
千葉工場では、ばい煙が発生する主な施設の測定データがリアルタイムで行政に送信され、双方で監視するシステム(テレメータ)を導入し、管理に努めています。2021年度は、大型定期整備に伴いボイラーの稼働調整や副生燃料油の成分が変動したため、SOx排出量が増加しました。
四日市工場では、SOxおよびばいじんの排出量は、2021年度も低い値を維持しています。
両工場とも法律・協定を遵守し、法律の排出濃度規制値および協定の排出計画値などを大幅に下回っています。
【SOx排出量】
【NOx排出量】
【ばいじん排出量】
(4)水質汚濁防止

排水処理設備の一部
水質、排出量は前年度同水準
千葉工場および四日市工場は協定に基づき、排水の管理・削減に努めています。2021年度は前年度と比較し、排水水質の大きな変動はありませんでした。両工場とも法律・協定を遵守し、法律の排出規制値および協定の排出計画値などを大幅に下回っています。
【COD排出量】
【全窒素排出量】
【全りん排出量】
(5)VOC対策
排出量削減対策により環境負荷を低減

ベンゼンリターンガス回収装置
VOC※排出量削減対策として、水吸収設備の設置、浮き屋根式タンクまたは内部浮き蓋付き固定屋根タンク化、船出荷時の余剰ガス回収などを行い、環境負荷低減に努めています。
また、工場敷地境界における濃度測定を定期的に行い、排出量の削減に向けて検討を重ねています。
千葉工場においては、2020年度に分解ガソリンタンク1基に排気を焼却処理とする対策を実施しましたが、今後新たにタンク1基に同じ対策を講じる予定です。
※VOC(Volatile Organic Compounds):揮発性有害物質
揮発性を有し、大気中で気体状となる有機化合物の総称であり、トルエン、ベンゼン、キシレン、酢酸エチルなど多種多様な物質が含まれます。
浮遊粒子状物質および光化学オキシダントの発生の原因には様々なものがありますが、VOCもその一つです。
(6)産業廃棄物の削減とリサイクルの推進
埋立率1.0%以下を維持
当社は、製造工程で発生する廃棄物の削減と再資源化の推進に努めています。
千葉工場では、運転状況により廃棄物の発生量はほぼ横ばいながら、再資源化に努め環境負荷低減を図り、埋立率は1.0%以下を維持しています。四日市工場では、定期整備工事の廃棄物を削減し、排水槽清掃(1回/2年)の実施年ではなかったため廃棄物発生量が減り、最終処分量も削減することができました。
【廃棄物発生量】
*本年度の集計にあたり、過年度の数値を
一部見直しました。
【再資源化量と最終処分量】
*サーマルリサイクル量については、全事業場で考え方を統一し、
2018年度より再資源化量から除外しました。
*本年度の集計にあたり、過年度の数値を一部見直しました。
廃棄物の処理及び清掃に関する法律に基づく産業廃棄物処理施設の維持管理状況の公表
(7)プラスチックに係る資源循環への取り組み
再資源化率の向上を目指す
2022年4月1日より「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律(プラ新法)」が施行されました。
当社は2021年度のプラスチック使用製品産業廃棄物が318トンで250トン以上となるため、「多量排出事業者」に該当し、排出の抑制、再資源化等に関する目標設定、目標達成のための取組の計画的な実施が必要となっています。
当社の廃プラスチックは主に定期整備等の工事から出る廃棄物が主であり、リデュース(削減)は難しいところですが、今年度から千葉工場と四日市工場にはプラスチック排出抑制責任者を選任しており、今後は分別の徹底などで再資源化率を高める取り組みを検討していくとともに、本社の環境管理監査で両工場の取組を確認し、CSRレポート等で公表していきます。
【プラスチック使用製品産業廃棄物の発生量】
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年度 | 2017 | 2018 | 2019 | 2020 | 2021 |
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プラスチック使用製品 産業廃棄物(t) |
271 | 340 | 233 | 384 | 318 |
(8)PCB回収・保管と処理計画
回収、保管、処理を適切に実施
千葉工場・研究所ではPCB※廃棄物を「PCB廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法」に基づき、特別管理産業廃棄物として適切な管理を実施しています。
高濃度PCB廃棄物(変圧器、コンデンサー)については2021年度に処理を完了しました。高濃度の安定器等(2022年3月末時点の保有量:約7.4t)、低濃度PCB含有廃棄物についても国の定めた方針のもと、掘り起こし調査も並行しながら、着実に処理を進めています。
なお、四日市工場では、すべてのPCBの処理がすでに完了しています。
※PCB(Poly Chlorinated Biphenyl):ポリ塩化ビフェニル
毒性が強く発がん性があり、1972年に製造・使用が禁止されています。かつては電気機器の絶縁油、熱交換器の熱媒体、ノンカーボン紙など様々な用途で利用されていました。
(9)土壌汚染防止
汚染土壌の浄化対応の継続
千葉工場では、関連会社の土壌から1,2-ジクロロエタン等の有害化学物質が確認されたため、汚染地域の地下水を汲み上げて土壌の浄化を継続して行い、敷地内に複数の観測用井戸を設けて定期的な観測を実施しています。浄化の成果と状況については、年1回行政に報告を行っています。
(10)化学物質の管理(PRTR対応)
PRTR法に基づき適正に管理、報告
「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律(化学物質管理促進法またはPRTR法)」に基づき、第一種指定化学物質462物質のうち千葉工場30物質および四日市工場12物質の届出、報告を行っています。
千葉工場では、生産量の減少に伴いノルマルヘキサンおよびキシレンの排出量が減少しました。
四日市工場では、前年度とほぼ同等の排出量となっております。
【個別排出量】
(2021年度PRTR届出物質中の排出・移動量合計1t以上の物質)(t/年)
千葉工場・研究所
(年度)
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化学物質名 | 大気排出 | 公共用水排出 | 事業場外排出 | |||
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2020 | 2021 | 2020 | 2021 | 2020 | 2021 | |
亜鉛の水溶性化合物 | – | – | 1.1 | 1.0 | – | – |
エチルベンゼン | 12.0 | 9.0 | – | – | – | – |
キシレン | 24.0 | 14.0 | – | – | – | – |
1.4-ジオキサン | – | – | 1.7 | 1.4 | – | – |
1,2-ジクロロエタン | 2.8 | 2.8 | – | – | – | – |
ジシクロペンタジエン | 2.9 | 3.6 | – | – | – | – |
トルエン | 64.0 | 62.0 | – | – | 0.3 | 0.2 |
ノルマルヘキサン | 160.0 | 140.0 | – | – | 0.0 | 0.1 |
ベンゼン | 2.1 | 1.8 | – | – | – | – |
ホウ素及びその化合物 | – | – | 1.5 | 1.2 | 1.0 | 0.8 |
四日市工場
(年度)
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化学物質名 | 大気排出 | 公共用水排出 | 事業場外排出 | |||
2020 | 2021 | 2020 | 2021 | 2020 | 2021 | |
エチレングリコールモノメチルエーテル | – | – | – | – | 8.3 | 8.5 |
ポリ(オキシエチレン)=アルキルエーテル(アルキル基の炭素数が12から15までのもの及びその混合物に限る。) | 0.1 | 0.1 | – | – | 6.9 | 6.6 |
(11)ダイオキシン(有害物質)の管理
千葉工場に設置している廃棄物焼却炉について施設の管理を徹底し、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」に基づき、廃棄物処理施設の維持管理の状況に関する情報を当社CSR HPにて公表しております。
(12)水銀照明の計画的廃止
「水銀に関する水俣条約」を受け、環境汚染物質の低減施策として水銀照明設備のLED化を計画的に進めています。2021年度は183台の更新を行いました。