2025年10月28日
半導体は、スマートフォンや自動車、産業機器、そして生成AI用サーバーなど、現代社会のあらゆる分野に不可欠なものになっています。丸善石油化学は、1997年に半導体フォトレジスト用ポリマーの製造を開始しました。以来、半導体の加工工程において極めて重要な材料であるポリマーの供給事業を、基礎化学品・化成品に次ぐ事業の柱として育ててきました。現在では、最先端の製品であるEUV(極端紫外線)対応製品の開発・供給体制を強化することで、グローバルトップレベルのポジション確立を目指しています。
半導体製造工程における当社のポジション
半導体は、設計からパッケージングに至るまで多段階の工程を経て製造されます。その中でも、シリコンウェハー上に微細な回路を形成する工程は、半導体性能を左右する重要なプロセスです。この工程では、フォトレジスト材料を塗布し、回路が描かれたマスク(微細な電子回路が描かれているガラス板)を介して光を照射(露光)して回路パターンを転写することで精密な構造が形成されます。
丸善石油化学は、この工程に用いられるフォトレジストの主原料であるポリマーの開発・製造を担っています。露光工程では加工する回路の線幅によって、KrF(フッ化クリプトン)、ArF(フッ化アルゴン)、EUVといった異なる波長の光が使用されており、丸善石油化学ではすべての光源に対して、その特性に対応した高品質のフォトレジスト用ポリマーを提供することで、半導体の製造技術を支えています。
今後の市場の伸びと丸善石油化学の事業の可能性
半導体は「産業のコメ」と呼ばれる産業のデジタルインフラの基盤部品であり、現代の産業、生活において重要な役割を果たしています。世界半導体市場は2024年に前年比19.7%のプラス成長、市場規模は初めて6,000億米ドルを超え、2030年には1兆米ドルを超えると予測されています。近年では、自動車の安全性や自動化を支える車載向けや、5G通信の普及、生成AI 向けの需要が市場を牽引しており、特に生成AI の世界市場は、2023年から2030年にかけて年平均約53%成長する見通しで、継続的な成長が見込まれています。
半導体の集積化技術は、露光技術のKrFからArF、EUVへの進化とともに10μmから2nmまで回路パターンの微細化が進み、微細化の進展とともにフォトレジスト材料の種類と品質要求は高度化されてきました。丸善石油化学は、黎明期からフォトレジスト原料メーカーとして地位を確立し、高度化する顧客ニーズに耳を傾け、絶え間なくチャレンジし実現することで高いシェアを有しています。サプライチェーンを下支えしてきた信頼をベースに挑戦し続け、半導体市場の成長とともに事業の発展、産業の未来に貢献していきます。
半導体フォトレジスト用ポリマー開発における当社の強み
最先端EUVでの高いシェア
丸善石油化学はフォトレジスト用ポリマーの分野において、国内外の主要フォトレジストメーカーに原料を供給することで、高いシェアを維持しています。
特に最先端の半導体製造で使用されるEUV向けフォトレジスト用ポリマーは、高い純度と精密な分子設計、高精度な検査技術が求められる領域であり、当社は長年培った重合・精製技術と検査技術を活かして、安定した品質と供給体制を確立しています。
また、さらなる品質の高度化に対応するための試作設備を新設し、開発スピードをさらに高め、顧客ニーズへの柔軟な対応力を強化、最先端領域における競争優位性を一層高めていく計画です。
顧客ニーズに応える高い技術力
半導体材料に求められる性能は、用途や顧客によって大きく異なります。丸善石油化学では、ポリマーの設計から製造までの各工程において、細かな調整と高度な管理を行い、こうした多様なニーズに応えています。
当社は、顧客および関係部署との密なコミュニケーションを通じて、用途に最適なポリマー設計を行い、試作から量産まで一貫して対応しています。カスタムメイド製品が多く、各顧客の仕様に合わせた柔軟な対応力と技術力が当社の強みです。これにより、信頼性の高い製品を安定供給し、顧客の製造プロセスの最適化にも貢献しています。製造工程では、ポリマーの構造や分子量、組成を精密に制御したうえで、不純物や金属成分を極限まで除去し、用途に応じた液体に仕上げるなど、複数の工程を経て高品質な製品をつくり上げています。製造中などに課題が発生した場合には、技術部門をはじめとする関係部署が連携し、迅速かつ的確な対応で問題解決にあたる体制を整えています。
これらの技術と体制を融合し、最先端の半導体製造に求められる高品質な材料を、継続的かつ確実に提供できる仕組みを構築しています。
品質保証体制の強化と信頼性向上
丸善石油化学では、製品の出荷前検査を含む信頼性の高い品質保証体制を構築し、半導体製造における欠陥リスクの最小化に取り組んでいます。
特にEUV対応製品では、微細な異物や金属不純物の混入が半導体の歩留まりに直結するため、検査工程の標準化とロットごとの精密検査に加え、装置状態や製造環境への配慮を前提とした、的確な分析の実施が不可欠です。このため、分析機器の高性能化と分析技術力の向上にも継続的に取り組み、より高度な品質管理の実現を目指しています。
また、品質保証部門と製造部門が連携し、迅速なフィードバック体制を構築することで、顧客ニーズに柔軟に対応しています。こうした取り組みにより、製品の品質と供給の安定性を確保し、顧客の製造ラインにおける信頼性向上にも寄与しています。
加えて、品質教育にも力を入れており、組織全体の意識向上を図り品質保証を実現する体制づくりを進めています。現場レベルでの品質意識の定着にも注力し、継続的な改善活動を支えています。
これらの取り組みを通じて、品質保証体制のさらなる強化と顧客満足の向上を目指しています。
VOICE
お客様の期待を超える製品と技術を提供するため挑戦を続けます
機能性樹脂開発一課
成田 彩純
私たちは、半導体製造に不可欠なフォトレジスト用ポリマー材料の開発を通じて、最先端技術を支えています。市場の急速な進化に対応しながら、顧客の多様なニーズに真摯に向き合い、期待を超える製品と技術を提供することを目指しています。日々の研究開発では、フォトレジスト用ポリマー材料のさらなる高品質化を目指し、技術開発に挑む中で新たな価値を創出し、大きなやりがいを感じています。顧客との対話を大切にしながら、年々厳しくなる品質要求に対応すべく、次世代につながる材料開発を目指して日々挑戦を続けています。今後も技術革新の最前線で、信頼されるパートナーとして、半導体産業の未来に貢献していきます。

