
前中期経営計画は、大きな決断と現場の力で、
次の成長を支える確かな基盤を築いた3カ年でした
2023年度から2025年度までの中期経営計画(以下、前中計)での大きな決断は、エチレン生産最適化を決定したことです。50年以上も当社を支えてきたエチレンプラントを止めることは、苦渋の決断でしたが、基幹事業の一つである基礎化学品事業を筋肉質な体質に転換し、エチレンセンターとしての責任を継続する基盤強化につながると確信しています。
また、半導体フォトレジスト用樹脂を製造する機能化学品事業では、AIの普及に伴って想定を上回る速度で需要が拡大し、業績が大きく伸長しました。業績向上は、市場環境だけによるものではありません。品質要件が非常に高度化・厳格化する中で、営業部門がお客様の求める品質へのご要望を的確に捉え、それに対して開発部門・製造部門・品質管理部門が一体となってニーズに応えたことが大きな要因だと実感しています。化成品事業では、主に基礎化学製品の副産物を活用して溶剤などを製造していますが、未利用留分の有効活用を進め、イソパラフィン溶剤の増強を行った結果、化粧品用途などの販売が増加し、着実に収益につなげられました。
前中計での成果を支えたのは、従業員一人ひとりが自分の役割を理解し、各事業部が前中計で設定した施策を着実に遂行したことです。会社全体が一体となって取り組んだことが、それぞれの成果を後押ししたと考えています。
GX(グリーントランスフォーメーション)について検討を進める中で、非常にコストがかかることもわかってきました。現在はスピードが少し緩やかになってきていますが、2050年カーボンネットゼロに向けて取り組むべき課題であるという認識は変わりません。今後は、技術革新や制度の動向を見極めながら、社内外の技術力をどのタイミングで、どう活かしていくかをしっかりと検討し、実現の可能性と経済性を両立した取り組みを着実に進めていきます。
対話を重ねて役割を共有することが、
組織の力を最大限に引き出す最良のアプローチだと実感しました
私たちがまず大切にしているのが、基本理念である「忘るな安全第一」です。製造業にとっては、安全が確保されなければ安定供給も、地域住民の皆様からのご理解も得られません。これは今後も変わらず守っていかなければならないものと考えています。もう一つ大切にしたいのが、風通しの良い企業風土です。社外の方々からもこの点を評価されることが多く、従業員一人ひとりが安心して意見を発信し、自律的に挑戦できる企業風土は、当社の大きな財産です。
社長就任からの1年を振り返り、当社の最大の強みは安全文化であることをあらためて実感しました。千葉工場では2025年2月に特定認定高度保安実施者(通称:高圧ガスA認定※)の認定を取得し、四日市工場においても2026年3月に高圧ガス自主保安高度化事業者の認定を取得しました。これらの認定取得に満足することなく、さらにブラッシュアップすべく高度なエンジニア教育などを実施していきます。
私は意思決定においては、対話を最も大切にしています。2025年度の事業環境は非常に厳しい状況でした。どう対応すべきか、営業部門や製造の現場と直接対話を進めました。現場ではコスト削減策はやり尽くしたと感じている中、会社が置かれている状況を丁寧に説明し、どんなアイデアでも議論し、取り組んでほしいと話しました。すると、この1年で目に見える成果が生まれました。対話を重ねることで感じたことは、従業員一人ひとりに自分の役割をしっかり認識してもらうこと、それを会社としてきちんと伝えることが大事だということです。
また、直接従業員と対話することを大切にしています。執務の隙間を探して、1年に数回ほど工場を訪れ、ヘルメットを被って現場を歩き回っています。オペレーション担当者にどうしたら収益につながる運転になるかなどといった声かけをすると、いろいろな気づきが生まれ、新しい改善点を探してきてくれます。私は製造部門の出身なので、製造現場は非常に居心地の良い場所です。次の訪問で成果を伝えると、さらにまた改善につながるアイデアが出るという良いスパイラルが生まれていくことも強く実感しました。さまざまな人と話すことで、その人も私自身も考えがより磨かれ、互いの理解も深まっていくのだと思います。
- ※高圧ガスA認定:高圧ガス保安法に基づき「高度な情報通信技術を活用しつつ、自立的に高い水準の保安を確保できる事業者」として経済産業大臣から認定された特定認定高度保安実施者のこと。
AXを成長の原動力に、既存事業を磨きつつ、
新たな収益の柱を育てる変革を加速させます

2026年度からスタートする新たな中期経営計画(以下、新中計)では、スローガンを「変革への挑戦と実現」としました。前中計では、例えばエチレン生産最適化をはじめとする「変革への挑戦」に取り組んできました。新中計では、それに「実現」を加え、これらの変革を着実に収益とし目に見えるものにしていくことが非常に重要だと考えています。
新中計の基本的な戦略としては、前中計で着手した「エチレン生産最適化の完遂」「化成品販売強化」「未利用留分有効利用」の取り組みを着実に実行していく計画です。これにより、基礎化学品と化成品を合わせた石油化学事業の収益を大きく改善させていきます。また、機能化学品事業は、コスモエネルギーグループの「NeXTグロース」に位置づけられている事業です。AI関連の半導体需要は想定を大幅に超える勢いで伸びていることから、この需要拡大を確実に取り込むための適切な投資を行っていくことが重要だと認識しています。需要のスピードに後れをとらないよう投資タイミングを確実に見極めながら進めていきます。
さらに新中計での重要なミッションは、第3の収益の柱を創出することです。まずは機能化学品事業を石油化学事業に並ぶ収益の柱に育てていくことが喫緊の課題ですが、会社をより一層成長させるには第3の柱が不可欠です。これまで当社が培ってきた技術や顧客基盤などを活用しながら、どの領域に進出していくべきかを新中計期間中で見極め、方向性を定めていきます。
新たな成長エンジンとして注目しているのがAX(AIトランスフォーメーション)です。私たちは、AIの活用とDXを組み合わせたものをAXと位置づけていますが、生産性向上や安全、人材育成といった分野でAXを積極的に活用し、会社の底力を高めていきます。工場には膨大なデータが蓄積されており、生産最適化についてもさまざまなソフトウェアを導入するなど、以前からDXを積極的に活用してきました。これまで積み重ねてきたDXにAIを組み合わせることで、単なる足し算ではなく掛け算の効果を生み出していきたいと考えています。安全性への取り組みにも、AIを積極的に活用し、情報を的確に整理することで向上させていく計画です。AXの活用によって、生産性を向上させ、新たな挑戦の機会を創出します。
加えて、人材教育もAXによって充実させていきます。会社としての知見や経験は年々積み上がる一方で、毎年数十名の新入社員やキャリア採用の従業員は、基本的には知見ゼロからの出発になります。私自身、入社して36年になりますが、その間に積み重ねてきた経験を一度に吸収することは非常に困難です。全社に蓄積された豊富な知見やノウハウを、いかに効率よく短期間で習得できるようにするかという観点では、AIの力も借りながら進めていかなければならないと考えています。
2025年度は、個々の従業員が日々の業務の中で省エネルギー活動や業務改善活動に主体的に取り組んだことで、大きな成果を生み出すことができました。これらの成果は、現場で働く従業員の意識と行動の積み重ねによって実現されたものです。新中計においても、変革を推進する原動力は従業員一人ひとりです。私たちは、それぞれが自らの役割を理解し、主体的に考え行動できる組織づくりを進めていきます。
また、安全の確保やリスクの早期発見・対応は事業活動の基盤であり、一人ひとりの高い意識と行動によって支えられています。あらゆる業務において、気づいた課題や懸念を見過ごさず、迅速に共有・対応できる風通しの良い企業文化を大切にしながら強固な経営基盤の構築に努めます。当社は、従業員の主体性と挑戦を尊重し、多様な知恵と力を結集することで、社会やお客様に新たな価値を提供し、持続的な成長を実現してまいります。
新中計では6つのマテリアリティを軸に、
持続可能な成長と社会価値の創造を追求します
新中計では、6つのマテリアリティKPIを定めました。(1)安全操業・安全供給、(2)脱炭素化への挑戦、(3)持続的成長戦略、(4)従業員のエンゲージメント・成長、(5)リスク対応力強化、(6)ガバナンス強化がそのマテリアリティであり、これらを軸に持続的な成長と社会への価値提供を実現していきます。
6つのマテリアリティの中でも、「安全操業・安全供給」は最重要課題と捉えています。基本理念である「忘るな安全第一」のもと、安全操業と安定供給を行うことで、地域住民の皆様をはじめ、お客様からの信頼を獲得していきます。
「脱炭素化への挑戦」も重要なテーマです。コスモエネルギーグループの目標である2050年カーボンネットゼロの実現に向け、Scope1・2排出量削減や削減貢献量の拡大を着実に進めていきます。また、2026年度からGX-ETS(排出量取引制度)が本格的に始動します。これについても、制度対応にとどまらず、新たな成長につなげる好機として取り組んでいきます。


ステークホルダーとの信頼を礎に、
変わらぬ使命と新たな挑戦で、選ばれ続ける企業を目指します
当社は創業以来、社会に必要な素材を安定的に供給することで、人々の暮らしや産業の発展を支えてきました。今後もその使命は変わりません。一方で、社会から企業に求められる役割は大きく変化しています。安全操業や安定供給に加え、脱炭素化への対応、持続可能な社会への貢献、ガバナンスの強化など、企業として果たすべき責任はますます大きくなっています。
私たちは新中計の達成を通じて、社会課題の解決と企業価値向上の両立を目指していきます。そして「変革への挑戦と実現」を着実に積み重ねることで、将来にわたって信頼され、選ばれ続ける企業でありたいと考えています。これからもステークホルダーの皆様との対話を大切にしながら歩んでまいります。引き続き、変わらぬご支援を賜りますようお願い申し上げます。

