丸善石油化学の役割
丸善石油化学の事業は、ナフサ分解により生産される基礎化学品と、その副生品から生産される溶剤やナフサに依存しない樹脂製品を製造・販売する機能化学品の2本柱で展開しています。ナフサを最後まで無駄なく製品化しながら、素材としての石油化学製品の総合的な開発に取り組んでいます。
基礎化学品事業
原油を精製して得られる「ナフサ」から製造される、エチレン、プロピレン、ブタジエン、ベンゼンといった石油化学品を製造・販売しています。主力製品となるエチレンの生産量は、同一工場として、国内最大規模のエチレン生産能力を保有しています。これらは、産業の基礎となる各種化学品原料であり、プラスチックや化学繊維、合成洗剤、自動車用部材、塗料、医療品など幅広くあらゆる分野で利用されるため、現代の産業とくらしを支えるうえで欠かせないものです。このように、現代のくらしを支える基礎的な石油化学品であるため“基礎化学品”と呼ばれています。この基礎化学品を、競争力のある価格で高品質な製品を安定供給し続けることが、当社に求められています。
機能化学品事業
エチレン製造過程で分留・抽出する副生物を有効活用した機能化学品を開発して、製造・販売しています。特に、メチルエチルケトンは世界トップクラスの生産能力を誇っています。また、半導体レジスト用樹脂でも世界トップクラスのシェアを誇っており、各種半導体の製造に使用されています。今後も世界的なDXおよびGXの進展を支える、需要拡大が期待される製品です。このように特定の分野で高い機能を発揮するものを“機能化学品”と呼んでいます。求められる品質、機能を有する機能化学品を開発・製造することで、その分野における革新的技術に材料から貢献している事業です。
品質への取り組み
1.品質方針の改定
化学品・製品安全の軸となる方針を明示
当社では、2018年に制定した「品質方針」のもと、品質マネジメント活動に取り組んできました。2021年度からは、それまで環境管理の中で取り組んできた化学品・製品安全の分野も品質保証の枠組みに取り込み、国内外の法規制への的確な対応、製品含有化学物質の情報管理の推進、製品の危険性・有害性の表示、通知の推進に取り組んでいます。このたび、2023年4月に「品質方針」を改定し、新たに化学品・製品安全の軸となる方針を組み込み、すべての就業者が化学品・製品安全に関する取り組みをより一層意識できるようにしました。今後は新たな「品質方針」のもと、さらなる品質向上に向けて、お客様からの満足と信頼を得るための活動に取り組んでいきます。
品質方針
当社はCC10に定められた行動基準に則り、顧客に信頼される製品を安定的に供給し、社会の発展に貢献するために、以下の品質方針に基づいて活動する。
- (1)顧客の品質要求を実現し、満足と信頼を得られる
製品とサービスを提供する。 - (2)品質保証システムを構築し、継続的に改善する。
- (3)品質管理レベルの向上を推進し、安定した製品品質と生産を確保する。
- (4)製品の危険性・有害性情報および製品含有化学物質に
関わる情報を適切に伝達し、サプライチェーン全体で
製品の安全かつ適正な取り扱いを推進する。
2.品質保証システムによる品質マネジメント
「方針管理」「日常管理」「教育・育成」の柱で活動を展開
当社は、下図に示す品質保証システムを構築して品質マネジメントに取り組んでいます。
子会社も含めた全社の品質保証、品質管理に係る組織を品質マネジメント組織と称して、品質部門間の連携を強化するとともに、当社が実施すべき品質保証、品質管理の一連のプロセスを品質マネジメントと定義し、「方針管理」「日常管理」「教育・育成」を3つの柱として活動しています。日常管理における標準書改定時には、関係部署も交えた教育を着実に実施しています。
品質保証システムによる品質マネジメント体制(品質保証および品質管理)
3.サプライチェーンにおける品質マネジメントの構築
委託先評価の実施
サプライチェーン全体にわたる品質保証システムをより一層盤石にするために、取引先・委託先の連携強化に向けた取り組みを実施しています。当社工場での原料受入から製品製造、出荷に至る過程だけでなく、製品を出荷してからお客様にお届けするまでの過程(輸送、保管、荷役など)や、製造委託先も含めた管理を強化し、品質リスクを適切に管理するのが目的です。2022年度は、陸上輸送委託先・製造委託先の評価を実施し、リスクの抽出・改善に取り組みました。
取引先・委託先管理強化の取り組み
4.品質教育の実施
幅広い分野の教育と資格取得を推進
品質マネジメントへの意識向上や、品質活動の活発化、品質管理レベルの向上を図るため、さまざまな教育プログラムを企画・実施しています。2022年度も引き続き、新型コロナウイルス感染予防のため、オンライン教育や動画配信を取り入れました。品質管理手法のスキル向上を目的としたQC(品質管理)検定取得については、2021年度の感染予防による受検見送りがあったため、2022年度は大幅に取得者が増加しました。
5.品質マネジメント組織への監査
社内4部署と子会社1社を対象に実施
品質保証部では、ガバナンス強化およびリスクマネジメントの一環として、2018年度より品質マネジメント組織(子会社:丸善油化商事(株)、サンプラック工業(株)を含む)に対し品質マネジメント監査を実施しています。
2022年度は、社内4部署および子会社1社に対し、前回監査のフォローアップおよびSDCA*による日常管理の実施状況の確認を重点項目として監査を実施しました。また、前年度に引き続き、営業部門に対して取引先・委託先管理に関する監査を実施しました。重大なリスクや不適合はありませんでしたが、一部課題が確認され、さらなる改善を図っています。
*SDCA(Standerdize-Do-Cheak-Act):標準化、実行、評価、改善のサイクルを回すことで、品質の向上などを目的とした改善手法
監査方針 | 取引先・委託先管理を考慮し、営業部門に対して定期監査を実施する。従来の品質マネジメント組織に対しては、前回監査のフォローアップとSDCAによる日常管理の実施状況の確認を中心に実施する。 | |||
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監査結果 | 被監査部署 | 不適合指摘 | 改善の機会 | 報奨 |
千葉工場 品質管理課 | なし | 2件 | 2件 | |
四日市工場 品質管理課 | なし | 4件 | 1件 | |
営業本部 基礎化学品一部アロマGr | なし | 3件 | 2件 | |
営業本部 化成品部化成品2Gr | なし | 3件 | 1件 | |
サンプラック工業(株)埼玉工場 | なし | 4件 | なし |
6.化学品・製品安全
当社では、化学品の安全に関する取り組みを以下の3つの項目で進めています。
- ①国内外の法規制に的確に対応するため、化学物質の審査や登録を行っています。
そのため、製品含有化学物質管理を推進し、国内外の法規制や業界基準の確認を行っています。 - ②お客様からの化学物質管理や安全取り扱いに関する依頼に対して、適切な情報提供を行っています。
- ③当社製品の危険性や有害性の表示に関しては、GHSに基づき安全データシートやラベル、陸上輸送に必要なイエローカードについても見直しを進め、製品安全に関する情報提供を努めています。これらの取り組みにより、化学品の安全性を確保しています。