大型プロジェクト始動 将来を担う重点施策が導く 社会的な使命とは

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2019年09月30日

化学技術を基盤とし、くらしと産業の健全な発展に貢献する。

この企業使命を果たす上で、安全操業を徹底し社会を支える石油化学製品を安定的に供給し続けることは当社にとって最大の責務であり、そのためには、持続可能な社会の実現に向けて日々変化する事業環境に的確に対応していくことが必要です。

このような経営認識のもと、当社は2018年度を初年度とする新たな中期経営計画をスタートさせ、その具体的施策として5つの大型プロジェクトが始動しました。

各プロジェクトは、投資案件として経営上重要な位置付けであることは言うまでもありませんが、高品質な製品の安定供給、付加価値の創造、地域の皆様の安全と健康の確保、地球環境の保全など、当社が掲げる行動基準(CC10)においても欠かすことのできない意義を有しています。

いよいよ本格的に動き出した活動について、日夜奮闘している担当者の声とともに報告します。

Project1:第3エチレン製造装置(3EP) 大型分解炉建設

分解炉は、エチレンプラント最上流の基幹設備で、その心臓部ともいえます。

現在、当社(3EP)ではこの分解炉を18炉保有していますが、大半を占める14炉は生産能力が年2万5000トンと小型で、建設から約50年が経過しています。このため、老朽化による安全性や、保全工事の増加・長期化に伴う生産能力の問題が懸念されてきました。これら諸問題を未然に防ぐため、2020年の完成を目指して生産能力年7万5000トンの大型分解炉2炉の建設を進めています。中長期的には同型炉をさらに2炉新設し、旧型の分解炉は一部廃炉にしていく予定です。

より生産効率の高い分解炉への切り替えが進めば、運転管理の強化とともに製品のさらなる安定供給に繋がるだけでなく、使用燃料の削減に伴うCO2排出量や環境負荷の低減なども実現できます。分解炉の大型化および機能維持は、当社の基盤を支える重要な施策です。

Project2:第2ビニルエーテル(2ADV)※1 製造装置の新設

当社はこれまで自社技術による誘導品の創出に取り組んできました。その中でエチレン製造装置から抽出されるアセチレンの有効活用策として1998年に生産を開始したビニルエーテル類は、これを使用することで低粘度、低毒性、低刺激性など、様々な機能を付加することができる高機能製品の一つです。

当社のビニルエーテル類の用途は大きく3種類。紫外線硬化型インキ、高耐候性フッ素樹脂塗料およびコンクリート混和剤の各種製品向け原料としての用途で、これらの製品は、VOC(Volatile Organic
Compounds:揮発性有機化合物)規制の厳格化等に伴う環境対応や、社会インフラ整備の活発化とその耐久性向上といった社会的な要請を受け、国内外における需要が拡大しています。

現在、既存のビニルエーテル製造装置の4倍の生産能力(3,000トン/年)を有する2ADV装置を新設中です。2ADV装置の完成により、お客様が求める機能を実現するための製品改良と増産対応の両面で、世界的に高まる需要に対応していきます。
※1 : Acetylene Derivatives Vinylether

Project3:プロピレン精留設備新設

当社の第3エチレン製造装置で製造されるケミカルグレードのプロピレンは、ポリマーグレードに比べ純度が低いため、用途やユーザーが限定されていました。一方、隣接するコスモ石油においても、FCC(Fluid
Catalytic
Cracking:流動接触分解)装置から副生されるC3留分の活用が課題となっていました。そこで両社は、双方の留分をポリマーグレードに高純度化する精留設備を建設することに合意し、共同事業としてスタートさせました。

ポリマーグレードプロピレンは、ポリプロピレンの原料として、その用途は包装材や繊維、容器、自動車部品など実に広範囲で、精留設備の新設によって新たなビジネスの創出や、その活動を通じた社会への貢献が期待されています。さらに設備完成後は、燃料やユーティリティの融通を含め「石油精製-石油化学」の連携を一層深めていく予定です。このプロジェクトは、コンビナートの競争力やプレゼンスを高め、地域経済の活性化にも繋げていくための鍵となる事業です。

Project4:CAP※2 設立への参画

荒川化学工業(株)、コスモエネルギーホールディングス(株)との共同出資により、「千葉アルコン製造(CAP)」を設立し、水素化石油樹脂の生産・販売をスタートさせます。

水素化石油樹脂は、当社の未使用留分(C9留分)を活用し、荒川化学工業の製造ノウハウによって製造するもので、紙おむつ等の衛生材に使用されるホットメルト接着剤の原料として利用されます。衛生材の多くは、インドやその他アジア諸国を中心とする人口増加や経済成長により、グローバルな需要増が見込まれており、人々の豊かな暮らしの実現に向けた社会的ニーズとなっています。
※2 : Chiba Arkon Production,Limited

Project5:南岸防消火設備の再構築

石油化学コンビナートで万一災害が発生すると、その被害は甚大になるため、防消火設備の性能やその検査方法などは「石油コンビナート等災害防止法」等の保安法令で厳格に規定されています。

法規は必要に応じて改正されていますが、千葉工場南地区の防消火設備は成り立ちが古く、現行法への適合が必要な箇所も出始めています。そこで当社では、近隣住民の皆様を含めた地域全体の安全・安心をより一層確保するべく、行政からの指導を仰ぎながら防消火設備の再構築を進めています。人々の安全で快適な暮らしと、当社の持続的成長を支えるために不可欠なプロジェクトです。

社会からの要請に応える体制整備が
自社の競争力強化・世界の経済発展に
~Cross talk~

プロジェクト推進部
プロジェクト推進課
2012 年入社

エチレンプラントの大型分解炉建設に、アシスタントプロジェクトマネージャー兼エンジニアリングマネージャーとして従事

生産管理部 技術課
2013 年入社

ビニルエーテル装置の新設で、アシスタントプロジェクトマネージャーを務める。各種管理のほか、建設会社に対する窓口も担当

プロジェクト推進部
プロジェクト推進課
2006 年入社

プロピレン精留設備の新設プロジェクトを担当。アシスタントプロジェクトマネージャーとして工程や品質の管理などに従事

営業本部 基礎化学品一部
オレフィングループ
2014 年入社

プロピレン精留設備新設を前提に、原料調達に関する合意形成や、予想取引量をもとにした物流オペレーションの調整などを担当

千葉工場 安全環境部 安全課
1991 年入社

さまざまな工場設備を対象に、消防法や石油コンビナート等災害防止法の観点から確認。官庁への問い合わせや説明なども担当

※役職名については、CSRレポート2019 発行当時

Chapter1:
丁寧なコミュニケーションが
丸善石油化学の企業価値を向上

―― プロジェクト業務を遂行する上で、どのようなことを心がけていますか?

千葉 原料の調達、製品の販売についてはそれぞれ社外の取引先と協議しますが、担当者間で合意しても、お互いに社内の別部署から新たな要望が出てきてしまうことがあります。できるだけ早く最善の着地点に落ち着かせるため、事前に社内の関係部署にヒアリングし、丸善石油化学としてのコンセンサスをとってから交渉に臨むよう心がけています。また、この業界のサプライチェーンは非常に長いという特徴がありますが、その川上を担う丸善石油化学のビジネスの相手先は各企業です。しかし、目の前の取引先のことだけでなく、扱う製品が形を変えて一般の消費者や広く海外に届くことも常にイメージしています。社会とのつながりを意識することで、視野を広く保てますから。

渕向 狙いは千葉と同じですが「メールより電話」「電話より対面」という感じで、各関係者に丁寧に説明して、議論の内容や目的を正確に理解してもらうことを心がけています。ここにいる全員に共通すると思いますが、プロジェクトには、社内外のさまざまな人が関与しています。当然、ひとつの検討課題に対する解釈や要望は立場によって異なります。例えば、法令順守もそのひとつです。建築基準法や消防法などに沿って工事を進める上では、回り道になったり非効率になったりする場合もあります。コンプライアンスの意識を高く持って自身が必要性を理解し、それを工事関係者に説明することも重要な職務です。

栄 ものごとを正しい方向に進めるためには、コミュニケーションの質がなによりも大切ですね。例えば、設備に求めるスペックを関係部署やコントラクターに伝える場合、単に数値を示すだけだと「できる」「できない」の二択になってしまいます。しかし、求めるスペックの根拠も示せば、「その目的のためにここまでやる必要はない」「要求レベルを少し下回ってよければ実現できる」など、有益な議論に展開できます。どうあっても譲るべきではない部分、実現に向けて多少の妥協・理解を求めるべき部分などを的確に判断するためにも、情報を丁寧に開示することが大切です。なにより誠実で地道な対話の積み重ねが、より優れた設備の整備につながり、ひいては地域住民や行政などからの信頼確保にもつながります。結果として、企業価値の向上にも寄与すると思いますね。

Chapter2:
多様な意見や専門性を集結することが
社会からの要請に真摯に応えることになる

―― 皆さん、対話を重視なさっているようですね。ただ、関係者が多いだけに実行するのは大変なのでは?

淵上 確かに、情報共有や意見集約の際は、丁寧さを心がけるほど大変になります。ただし、多様な知見を持ち寄って解決を目指せるという利点もあります。私の場合、法令に適合させつつ、生産効率を下げない方法を探って行き詰まることもありますが、そんなときは、官庁側が打開策をアドバイスしてくださることもあります。プロジェクトに求めるところは立場によって変わっても、プロジェクトそのものの意義や必要性は共有できているわけですから、心強いです。また、安全を優先しつつ環境に与える影響や生産効率にも配慮し、高品質な製品を生産していける体制を整えられたときの達成感は、苦労の大きさ以上に大きいと思っています。直接の関係者の安全確保や経済活動の活性化に貢献できるというだけでなく、社会の要請に応えられているという実感も抱けますから。

駒木 私が関わっている分解炉の建設では、各種法律への適切な対応について、淵上さんの部署に相談することも多くありますね。

淵上 はい。建設中の分解炉は2008年に新設した分解炉と同タイプですから、前例をお手本にできる部分が多いですが、現行の法規に則っているか等、バックグラウンドを事前にしっかり共有した上で、各方面と調整していくことが重要です。

駒木 技術は日々進化し、法規も改正されてきています。10年以上運用している中では、改善すべき点が少なくないのです。省エネや環境負荷低減につながる改善を採り入れつつ、安全面や法令順守面もクリアするには、やはりさまざまな立場からプロジェクトを見つめることが大切です。個人的には、機械的に前例に倣うのではなく、プロジェクト本来の目的に照らして、少しでも引っかかる点があれば、一旦立ち止まって解消してから先に進めるように意識しています。

Chapter3:
社員個々の誠意ある取り組みが
社会からの信頼を強固に

―― 締めくくりに、職務を通じて感じるやりがいや社会的意義について聞かせてください。

駒木 ナフサ分解炉は、丸善石油化学の中核事業の根幹ともいえる設備です。先述のとおり、2008年に前例があるわけですが、それをよりよい形に落とし込んでいくプロセスには大きな手ごたえを感じています。また、安全性や生産効率を高めつつ、安定的に製品を供給していくという意味では、社内外のステークホルダーに貢献できている実感もあります。

栄 私も、駒木さんと似ています。基本設計段階からビニルエーテル装置に関わっていますが、さまざまな議論を重ねることで、当初の想定より内容がどんどん良くなっていることを実感しています。また、未利用留分の活用がそもそものスタート地点ですから、装置を完成させることが資源の有効活用につながります。ちなみに、従来の耐候性塗料の寿命は10年前後ですが、ビニルエーテル類を利用した耐候性塗料では、30年持つものもあります。より優れた製品の安定供給に寄与していける点でも、その意義は大きいと思います。

渕向 個人的には、社内外のさまざまな関係者と助け合いながら難しい課題をクリアすること、そのプロセスを通じて絆を深められることに喜びを感じます。また、プロピレン精留設備が完成すれば、コンビナートの競争力強化につながります。丸善石油化学の成長が地域の活性化につながり、ひいては日本や世界の各産業の躍進につながる――そんな正の連鎖を創出できれば、さまざまな人の働きがいの創出や途上国のまちづくりの推進など、社会的意義の大きなテーマにもコミットできたことになり、やりがいを感じます。

千葉 私もやりがいの大きさを感じています。現在より高純度なポリマーグレードの生産体制が整うことで、ポリマーグレードがスタンダードな海外にも、販路が広がると見込んでいます。生産体制が整って新事業をスタートした後の可能性の大きさを実感します。そして、当社の製品でつくられた最終商品を手にとる方々を想像すると力が湧きます。このような形で自社や業界の成長戦略に関われていることはとても幸運なことだと感じています。

淵上 当社はコンビナートのセンター会社として、単に自社の従業員の安全性を高めるだけでなく、近隣の住民や企業に安心していただかなくてはならないという社会的責任を負っています。そこに直接関与しているので、責任は重大だと思っています。また、先ほど官庁からアドバイスしていただけることがあると言いましたが、これは、先輩達が誠意ある実績を示し、信頼を得てきた証だと思います。ここにいる全員に共通していると思いますが、社会から寄せられる信頼をより強固なものにして後進に引き継ぎ、当社の将来につないでいきたいと思います。

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