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長期ビジョン実現に向けたステップを着実に踏み出し、新時代を切り拓くべく、変革に挑戦し続けます 代表取締役社長 社長執行役員 舟橋 克之

経営者として対話を重んじるとともに、人材育成を重要なミッションと捉えています

 2025年4月に社長に就任しました。私が今まで企業人として、エチレンプラントの建設・運転、営業、経営企画などを経験した中で、大事にしていることの一つは、対話です。お客様や従業員だけでなく、パートナー企業や地域社会など、すべてのステークホルダーの皆様との対話を通じた意思の疎通が会社経営には最も重要だと思っています。
 2025年4月に発表した千葉地区エチレン生産最適化においても、エチレンプラントの協業先である住友化学株式会社様をはじめ、お客様とも、誠意を持って対話を繰り返したことで、いち早く方向性を決定してプロジェクトをスタートできたと感じています。国内のエチレン製造装置は低稼働が続き、厳しい事業環境に置かれていますが、コンビナートユーザーに競争力のある基礎化学品を供給することが当社の重要な使命です。現状2基あるエチレンプラントを住友化学様との合弁会社である京葉エチレン株式会社に集約する計画ですが、お客様へは最適化後の明確な方針をお伝えしたうえで、すべてのお客様のご要望をしっかりと伺い、その中から解決策を模索してきました。まさに、対話の重要性をあらためて実感する日々であり、「日本トップのエチレンセンター」を目指すという決意を新たにしました。
 重視しているもう一つは、人材育成です。あらゆるミッションを遂行するうえでも、その土台になるのは「人」です。従業員との双方向コミュニケーションを行う「経営トップキャラバン」をはじめとする直接対話を幾度も重ねる中で、自分たちの経験を若い世代にどう伝えるべきかに大きな課題を抱くようになりました。若手従業員との対話でしばしば感じるのは、当然ではありますが、彼らと年長者との経験や知識の差です。過去のデータや失敗事例などを含めたマニュアル類は存在するものの、経験を伴わずにそれらをすべて理解してもらうということは、やはり非現実的です。そこで現在、AIを活用して先輩たちの経験則を集約し、若手従業員がタイムリーに手順や対処法を導きだせるように構築すべく計画中です。これを活用することで、先輩と同じ目線に近づくはずです。これは喫緊の課題として、鋭意取り組んでいきます。

行動基準 CC10

CC10

いつの時代も、一丁目一番地は「安全第一」であり、その努力が石油化学会社初のA認定にもつながりました

 丸善石油化学が最も重要視していることは、「安全第一」です。石油化学工業は、多種多様な化学製品を製造する産業であるため、工場がある地域住民の皆様からの信頼が不可欠です。これまで歴代引き継がれてきた当社の基本理念および基本方針を継承し、安全に対する基本理念・基本方針を表した「安全宣言」に、私も2025年4月に署名しました。その基本理念では、「忘るな安全第一」を掲げ、安全が経営の第一原則であり、企業の使命であることを宣言しています。また、安全を徹底するためには、基本を忠実に実行するという地道さが最も大切です。あたりまえのように聞こえますが、「報連相」を徹底し、「安全第一」を繰り返し伝えていくことが経営者の役割だと認識しています。
 安全に関しては、2025年2月に千葉工場が高圧ガスA認定を取得しました。これは、石油化学事業所としては初の取得となります。A認定は、高度なリスク管理体制と高度なエンジニア教育の実施などの要件を満たし、高い保安力があると評価されて取得できるものです。この認定により、事業者自らが保安検査を実施することが可能になるなどの特例措置も付与されます。千葉工場の従業員の懸命な取り組みによってA認定を取得できましたが、保安力の向上という面で大きく前進したと自負しています。当社設備には経年劣化が進んでいるものもありますが、安全の基本を守りながら、新しい技術も積極的に採用し、両輪で保安力を発揮していきたいと考えています。
 さらに、丸善石油化学として大切にしていることは、行動基準である「CC10(Chemiway Commitment 10)」です。これは、お客様への誓い、地域の皆様への誓い、仲間(従業員)への誓い、すべてのステークホルダーへの誓いで構成された10の行動基準です。社会的責任を果たしながら持続的に成長していくためには、従業員一人ひとりが誠意を持ってCC10を実践することが大切であり、常に心がけて行動しています。

  • 高圧ガスA認定:高圧ガス保安法に基づき「高度な情報通信技術を活用しつつ、自立的に高い水準の保安を確保できる事業者」として経済産業大臣から認定された特定認定高度保安実施者のこと。
安全宣言

日本トップのエチレンセンターとしてサプライチェーンを支えながら、最先端の機能化学品を追及していきます

 日本の石油化学産業は、中国をはじめとする大型装置の新設や増強による世界的な供給過剰に加え、国内のエチレン需要の減少など、厳しい事業環境下にあります。その一方で、エチレンプラントの副生物も含めた石油化学品のサプライチェーンが確立しており、安定的に供給することで収益を確保できます。当社では、長期ビジョンの中で「日本トップのエチレンセンター」をゴールの一つに掲げていますが、エチレンセンターを核とした石油化学のサプライチェーンを今後も守っていくことは当社の重要な使命です。2026年度をめどに京葉エチレンに製造装置を集約化するとともに、引き続きコスモ石油株式会社との連携を強化しながら、京葉臨海コンビナートのユーザー企業に競争力のある基礎化学品を安定供給していきます。

 機能化学品事業では、半導体フォトレジスト用ポリマーの事業に力を入れています。AIをはじめ、半導体需要はさらに伸長していくと予想されます。当社は半導体製造に使用されるKrF※1レジスト用ポリマー、ArF※2レジスト用ポリマー、そして最先端のEUV※3レジスト用ポリマーともに世界トップクラスのシェアを誇ります。お客様の需要や用途拡大に応え、これまでの信頼をさらにゆるぎないものにするためには、研究開発に携わる人材と装置への先行投資が非常に重要となります。既存プラントでの追加増産に向けた投資のほか、将来的な高付加価値製品の強化を見据えて、次世代EUV向けレジスト用ポリマーの試作用装置の新設も推進し、当社の強みをさらに向上させます。
 化成品においては、当社の主力商品の一つであるメチルエチルケトン(MEK)の拡販や輸出採算性の向上を図っています。また、マルカゾールR(イソドデカン)は、汎用品用途での需要増加が見込まれていることから、2025年2月に設備増強を実現しました。どちらもエチレンプラントの副生物が原料であり、自社で原料を有していることが最大の強みです。今後も、お客様のニーズと当社の技術力がマッチする領域に積極的に投資を行い、事業基盤と生産体制の強化を図っていきます。
 また、基礎化学品、半導体フォトレジスト用ポリマーに続く第3の事業の柱を築くため、経営企画部の中に事業開発グループを新設しました。これまでは、研究開発視点から新規事業を検討してきましたが、当社グループの販売網や装置の強みを起点に、収益性の高い新規事業の開発に着手しています。

  • ※1KrF:(フッ化クリプトン)露光用光源であるエキシマレーザー。光源波長248nm
  • ※2ArF:(フッ化アルゴン)露光用光源であるエキシマレーザー。光源波長193nm
  • ※3EUV:(極端紫外線)レーザーでスズを照射して生成される高温プラズマを光源とする。光源波長約13.5nm

カーボンニュートラルへの取り組みを加速させるとともに、DXによって安全操業・安定供給を進化させていきます

 非財務中期経営計画として8項目を掲げて取り組んでいます。特に、主力事業であるエチレンプラントはCO2排出量が多いことから、気候変動対策としてのカーボンニュートラルへの取り組みがとりわけ重要だと認識しています。
 当社は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のグリーンイノベーション基金事業に採択され、エチレンプラントにおけるアンモニアの燃料化と廃プラスチックのケミカルリサイクルの2つの技術開発を、コンソーシアムとしてスタートさせています。アンモニア燃料化については、技術開発は順調に進捗しており、コストなどの事業性の検証に移行しました。廃プラスチックのケミカルリサイクルは、住友化学様との協働によって推進中であり、こちらもリサイクル技術の確立のめどが見えてきたところです。どちらのプロジェクトも、2030年の実証を目標にしています。
 さらに、クリーンなエネルギー・製品・サービスの提供の実現に向けて、2023年7月にISCC PLUS認証(国際持続可能性カーボン認証)を取得しました。お客様のニーズに対応した販売をすでに開始しており、今後もバイオマスやリサイクル原料を用いた製品群の販売体制を整備していきます。
 安全操業・安定供給も、重要な非財務の中期経営計画のテーマです。先ほども少し触れましたが、製造現場の知見や過去の技術検討資料をAIに学習させる概念実証を行いました。これからも製造現場でのDXを加速させ、スマート保安を一層推し進めていきたいと考えています。

非財務中期経営計画

非財務中期経営計画

次期中期経営計画では、長期ビジョンを見据え、方向性を3つに絞ってさまざまな施策に取り組んでいきます

 長期ビジョンとして、2050年の在りたい姿とスローガン「Making Progress & Challenge ~人と化学で新時代を切り拓く~」を掲げています。これらを実現するために、次期中期経営計画の方向性として3つの柱を設定し、取り組んでいきます。
 第一に、エチレン生産最適化の確実な実行によって、競争力のある基礎化学品事業を確実に運営し、収益基盤の強化を図っていきます。石油化学品は、くらしや社会に不可欠な製品であり、技術のアップデートも不可欠です。コスモ石油との連携によって、省エネルギーやカーボンニュートラルの取り組みを加速させていきます。
 第二に、化成品や機能化学品のさらなる事業拡大に向けて、経営資源の投入を強化します。特に半導体フォトレジスト用ポリマーは、右肩上がりのさらなる成長が期待できるので、積極的な設備投資を行っていきます。
 そして第三に、新規事業の創出を実行していきます。半導体フォトレジスト用ポリマーは30年以上前から取り組んできましたが、当初はこれほどまで伸長するとは見込んでいませんでした。同様に、新たな収益の柱となる新規事業も、ある程度、長い時間軸で考えていくことが肝要だと思っています。まずは、2030年までに新たな収益の柱を構築したいと考えており、2050年も視野にいくつかの製品や事業で可能性をしっかり見極めていきたいと思います。

風通しの良さを活かしながら、新たな価値を創造し、くらしと社会の健全な発展に貢献していきます

 丸善石油化学は、「化学技術を基盤とし、くらしと産業の健全な発展に貢献する」を企業使命とし、創業以来、ステークホルダーの皆様に支えられながら、これまで安定した経営を続けることができました。
 当社は、風通しが良い企業風土があり、若手従業員もさまざまなアイデアを出して議論できる環境があります。これからも「人」の良さを活かしながら、新たな価値を創造することで、くらしと産業の健全な発展に貢献したいと考えています。
 当社は、エチレンの生産最適化を実行することにより、筋肉質な体質と盤石な体制を構築できるめどがつきました。今後とも引き続き、ご支援を賜りますようお願い申し上げるとともに、これからの丸善石油化学にもぜひご期待ください。

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